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三島由紀夫 2022.11.15

死生観 その3

三島由紀夫という人は、本当に不思議な人で、文学者として世界的な成功を納め、地位、名声、富を自分の欲しいままにしながら、己の内なる真実に抗えず、あの壮絶な切腹劇をやってのけたのです。まずは内なる真実に辿り着く前に、色々分析してみようと思います。三島さんには精神的な公式があり、それは死=自分です。つまり死に目覚めることによって、自分自身の存在意義を見出せたのです。要するに理想的な死が理想的な自分と重なり合えば、死が己の生の活力に大いになり得たのです。しかし時には、理想的な死を追い求め過ぎて、現実の自分とのギャップが生じてしまい、その場合は理想と現実の狭間で苦しむことになります。そして、そのギャップを埋めるにも、死という手段しか結局は存在していなったのです。残念なことに死という経験は一回しか出来ないので、慎重になるのも頷けます。そして三島さんは、その貴重な一回を、究極の三島作品でもある、あの割腹劇に使いました。一方で、三島さんは内なる真実に辿り着くために、理想的な死を追い求め続ける必要性も、実はあったのです。つづく

 

 

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