三島由紀夫 2023.03.20
三島由紀夫という人間は、己の内に対極的な二つ事象を絶えず必要とし、それをお互いの写し鏡のように使いながら、己の内奥深くで眠っていた恥部のようなものまでも時に、さらけ出しながら自分の真理を追い求め、完結しようとした人生だったように思います。そしてあの事件では、文学的三島由紀夫と政治的三島由紀夫を見事に演じ切り、自らの意志で自決したという側面もありながら、サタンによって殺されたという悲劇性も相まって最高の芸術作品へと昇華しました。つまり文学の世界に閉じ込めていた野生の解放と天皇を中心とした伝統社会に身を捧げるという崇高な精神とが、見事に激突した前代未聞の自作自演の痛快活劇ドラマだったのです。それ故、三島さんは文学的三島由紀夫と政治的三島由紀夫とを、行ったり来たりしながら器用に立ち振る舞って見せました。最終的に、この二つは激突しながらも、華麗な融合を果たして、純粋なる死と純粋なるものの解放とを、武人らしく見事にやってのけたのです。事件当初は兵隊ごっこなどと揶揄されましたが、今ようやく時代が三島さんに追い付いてきたように感じています。それ故にAIでは、決して表現できない、血生臭くて人間らしい表現で、三島由紀夫の最高傑作を、私は自分の言霊で表現したいのです。