お知らせ

三島由紀夫 2022.07.18

内的エネルギー

三島由紀夫の人物像を分析すると、狂人と人格者が見事に融合した非常に興味深い精神性を兼ね備えた人物のように思います。そしてその純粋な根源(行動原理)に迫ろうとすると、必ず他者を圧倒する知識と教養で創られた、あの鎧が確実に邪魔をするのです。それ故、圧倒的な知の巨人から放つ独創性や行動力は、圧倒的に他を全く寄せ付けません。そして彼は遂に、この圧倒的な生命力を使って、あの規格外な事件を引き起こします。それが1970年11月25日の自衛隊市ヶ谷駐屯地での割腹自殺なのです。まず東部方面総監を人質にとり、バリケードを築きます。当然近くにいた幕僚たちは、総監を助けにバリケードを打ち破りなだれ込んできます。その時、三島さんは、持っていた関孫六の名刀で幕僚たちと切り合います。その中には、重傷を負った幕僚たちも沢山いたと言います。その中の一人が、後日証言されています。驚くことに、瀕死の手傷を負いながら、三島さんの志に基づいた行動を邪魔したという、自責の念を語っておられました。自衛隊ですから、やろうと思えば三島さんたちを、その場で銃殺にもできたはずです。そうすれば、クーデターを引き起こした犯罪者になれるはずでした。それをさせなかったのが、三島さんの規格外の生命力であり、人間力だったと思われます。その規格外の生命力が生み出した死から解放されたのが、何と三島さんの内的エネルギーだったのです。肉体から解放された、この内的エネルギーは、自由を保証され今だに生き続けているのです。その後も、多くの人がこの純粋な根源に興味を持ち、多くの思念がこの内的エネルギーに近づいてきました。結果、この強固な鎧を打ち破れずに、中心に辿り着けないまま疲れ果てたところ、この内的エネルギーの餌食になってしまうのです。何と、この内的エネルギーは今も多くの思念を取り込んで、成長し続けているのです。その姿は、おおよそ古来からある日本の美意識にありながら、それとは全く別の歪な造形物のようでもあったのです。

カテゴリー

アーカイブ